小さなチーム、大きな仕事―37シグナルズ成功の法則 (ハヤカワ新書juice)
著者/訳者:ジェイソン・フリード デイヴィッド・ハイネマイヤー ハンソン
出版社:早川書房( 2010-02-25 )
単行本 ( 185 ページ )
今更ながら標記の本を読んだ。読んだの自体は一ヶ月近く前なので、すごいエッセンスの部分しか頭に残っていないが、あえて書いてみる試み。
この本の重要なところは、いわゆる「UNIXの哲学(最初からいきなりエクスキューズだけど、このレビュー全体で、かなり広い意味で使わせていただく)」を「企業経営」にアプライした、その一部始終の、分かりやすい例であること、そしてあくまでも「ビジネス書」であること、だと思った。
(「ハヤカワ新書juice」と言うのは(ラインナップを見る限りは、Web企業の話に偏っている感じはあるけれど)あくまでも一般ビジネスパーソン向けの新書ラインナップだろう。)
本書は以下の短い主題を徹底して、様々な切り口から繰り返す。
- 組織は小さくあるべし
- 仕事の計画は短くあるべし
- 「やらない」ことをはっきりさせ、絶対にやらない
- 「変わる」こと、果ては「捨てる」ことを厭わない
この主題は、エンジニア職の一部の人には馴染み深いものだと思う。「アジャイル」の考え方そのものだし、また、「UNIXの哲学」の一種の変形だ。
僕はこの文章をノンエンジニア向けに書いている。
その上で説明すると、UNIXというのは、要するにWindowsと同じOSと呼ばれるソフトウェア(正確にはその総称めいたもの)で、各種サーバーで使われることが多いものだが、このソフトウェアは、以下の考え方で端的に表現される設計をしている。
一つのことを行い、またそれをうまくやるプログラムを書け。
必要と思われるあらゆる機能を揃えた大きな一つのプログラムより、たった一つのことしか出来ないが、その分小さいプログラムを組み合わせたほうが、結果的に大きな効率性と、変化への柔軟性、あらゆる環境で動作する移植性、などを得られる、という知見である。
これはプログラミングに限った話ではなく、コードを飛び越えた世界で、エンジニアは最初に「自分たちの行動のあり方」に適用 – アプライ – した。僕はそれが「アジャイル開発」だと思っている。つまり、アジャイル開発は、作る対象を小さなストーリーに分割し、一つ一つの開発を繰り返している。
#そして僕のようなヌルい人がこんな思い切ったことを言ってしまうと、真のアジャイラーやUNIX Geekの皆様からたくさん反論があるんだろうと思いつつ。。。その際は、勉強させてください。
UNIXの哲学はWikipediaの当該ページにも詳しい。
で、この「小さいものは美しい」の哲学は、ソフトウェア開発だけに止まらない、多くの場面での、より普遍的な適用力を持っているのだろうし、その一つの表出がこの37シグナルズ社の活躍(日本の会社ならクックパッドが近いのかも? こちらのブログの「クックパッドのものづくり」などを参照)なんじゃないかな、と思ったのだ。
この本、「Ruby on Rails」の37シグナルズの本なので、Ruby界隈とかアジャイル界隈、Web関係の人々の中で話題だった感もあるけど、逆にその辺の界隈、特にこんな本を読んじゃうような人たちとしては、「自分の考えの再確認」ぐらいの意味しかないんじゃないか、と思ったりもした。下手をしたら、本当に進取的な人ならば、「何を今更」とまで思ってしまうかもしれない。
異論反論あるだろうけれど、この本を読んで「目から鱗が落ちる」経験が必要なのは、多分技術者ではなく、「スーツ」 – ノンエンジニア、だと思っている。この本での主張は、むしろ、Webとかプログラミングとか全然関係ない世界にこそアプライされるべき「哲学」だと思った。
影響されるべき、と言うよりは、「まず知ってほしい」本(と考え方)。





